クライミングレスキュー訓練2018


毎年恒例、クライミングレスキュー訓練が今年も開催されました。
今年も日頃からクライミングを頻繁に行っているメンバーを中心に16名の参加があり、1日かけて緊急時対応の実践訓練を行いました。
昨年の訓練がダブルロープでの登攀を想定していたのに対し、今年はシングルロープを使った登攀中の事故を想定しています。

実施概要

実施日
2018年5月26日
場所
御在所岳 裏道登山道 七の渡し横の岩壁
メンバー
・しょう(CL) ・gigi ・ゆきむし ・アキ ・とおちゃん ・あゆ ・岩やん ・エスパー ・ひーちゃん ・ひでちょ ・りゅう ・ひらちゃん ・のりさん ・はやっしー ・たけ ・ゆい(記)

事故想定

シングルロープを使った二人組での登攀中、ロアーダウン不可高度(ロープ長の半分よりも上の高さ)でリードクライマーが滑落して意識を失ってしまった。
ビレイヤー(フォロー)が助けに向かい、けが人を地面に下ろす。

手順

ビレイヤーのハーネスにかかるテンションから脱出

ビレイヤー(フォロークライマー)はビレイの仮固定を行う。
リードを墜落させないようにビレイ器とロープをしっかり握って作業。

仮固定完了。これでビレイヤーは両手を使えるようになる。

フリクションノット(プルージックやクレムハイストノットなど)を使って2本のロープを巻きつける

上の一本を腰のハーネスにカラビナで連結する

仮固定を解除すると先程ハーネスにつけたフリクションノットに荷重が移る。

ここでビレイ器を解除して、フリクションノットのみでメインロープを支える。(ビレイヤーがテンションのかかったメインロープからの脱出できた)

※先程巻き付けた2本目のフリクションノットロープは次の工程で使用します。

ロープを伝って登り返す

壁面のセルフビレイを解除する。

①2本のフリクションノットロープのうち、下に取り付けたロープに足をかけて乗り込む。

②足のに乗り込んだらハーネスにつなげた側のフリクションノットロープを上に引き釣り上げて体重をかける。

③ハーネスに体重が移ったら足の側のフリクションノットを引き上げる。

上記①〜③を繰り返しながら、メインロープを伝って登っていく

壁面で救助支点を構築する

要救が宙吊りになっている位置よりも数メートル〜10メートルほど下の位置で、強固な支点が作れる場所を探す。

※要救の高度はロアーダウン不可高度なので、この要救との距離差が地面にロープを届けるために有効化できる引き下げ距離になる。

↓画像では指導の為地面で行っているが、これを壁面で行う。

支点構築は通常のシステムでOK。

固定分散としていますが、意味が理解できていて使い分けているのであれば流動分散でも大丈夫です。

PASやデイジーチェーンではなく、スリングで距離をとっておくのがポイント。

 

この時点ではまだフリクションノットに体重が乗っているので、要救をロアーダウンできない。

そこで、メインロープを仮固定する

登り返しと逆の手順で、フリクションノットからメインロープに体重を移す。

フリクションノット(2本)を解除する。

仮固定を解除してビレイ器からロープを出してながら壁のスリングに体重が移るまで下にくだる。

要救を救助支点まで下ろして固定する

そのままロープを緩めて要救を自分の支点の位置まで下ろす。(固定分散の高さに要救の腰が降りてくるのがベスト)

要救を支点の位置まで下ろしたら、フリーハンドになって作業を行うためにメインロープを仮固定する

↓壁面で救助を実施している際の様子(右側の緑と赤の2本のロープは訓練用の補助ロープで、実際には存在しません)

支点と要救をスリングを使ってマリナーノットでつなぎ合わせる

仮固定を解除してメインロープを送り、マリナーノットスリングに要救の荷重を移す。

これで自分も要救も共に壁面の強固な支点にぶら下がったことになる。

メインロープの支点を新しい支点に変更する

ビレイ器を解除して、要救のハーネスについているメインロープを引っ張り、全てのロープをたぐる。

ロープを手繰り寄せたら自分のハーネスのメインロープをほどき、頭上にある滑落点の支点からロープを引き抜く。

引き抜いたロープの末端を現在の支点に通す。通したロープの末端を結び(すっぽ抜け防止)地面に垂らす。

ここまでで頭上にあったロープの支点が、現在の支点の位置まで下がったことになる。

カウンターラッペルで地面まで下りる

自分のハーネスにつなげたデイジーチェーン(またはそれに類するもの)の中央にカラビナをつけ、メインロープにビレイ器をセット。また、フリクションノットを使ってバックアップもとる。

ビレイ器がセットできたら、支点につなげた自分のセルフビレイを解除する。

※この時、セルフにテンションがかかっていて解除が難しい場合はメインロープを靴に巻き付けて乗り込むとセルフからテンションが緩み、解除しやすくなる。

デイジーチェーンの先端にカラビナをつけ、要救のハーネスに固定する。

これでビレイ器に対して自分と要救が同時に連結されたことになる。

 

最後に壁の支点と要救をつなげているスリングのマリナーノットを解いてゆっくりとデイジーチェーンに荷重を移す。

これで降下準備はすべて完了。

降下直前の最終形の様子↓

左手で要救を支えながら、右手でメインロープ(腰のカラビナで折り返して使用)とバックアップのフリクションノットを同時に握り込んで操作し、ゆっくりと降下していく。

 

この1連の作業により、現在のロープの支点から地面までの距離がロープ長の半分未満であれば一度で地面まで下ろすことができる。

それ以上の距離がある場合は途中で新しい支点を作り、同様の作業を繰り返しながら地面を目指す。

訓練の様子

一人の訓練を行うのにだいたい45分程の時間が掛かりましたが、基本的に参加者全員が一連の作業を実際に行うことができました。

事前に資料を用意していただいていたこともあり、またシステムをよく理解した講師陣のサポートによりスマートで充実した訓練となりました。

あとがき

救助手順は上記のような流れになるのですが、資料で理解するのと実際にやってみるのとでは大きな違いがありました。

例えば自分のハーネスに繋がったロープやカラビナの数が増えてくると体重がかかっているカラビナに押さえられている他のカラビナが動かせなくなったり、要救を下ろそうとしても壁との摩擦で全く動かなかったり……etc

パートナーが墜落して意識を失った際にビレイヤーが置かれる心理状態は筆舌に尽くし難いものがあります。

目の前でパートナーが死んでしまったかもしれない、または今にも死んでしまうかもしれない。

そういったシチュエーションで冷静に救助行動を行うためにはかなりの訓練が必要になると思います。

今回の訓練は救助のロジックを理解し、基礎に立つための入り口の入り口です。

繰り返し練習することでいざという時に仲間を助けられるクライマーになりたいと強く感じられる1日でした。

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